NNT を計算するためには、お薬の効果の統計を取り、解析をしなくてはなりません。
しかし、データが少なすぎて解析ができない場合もあります。
計算をするだけなら、被験者(患者)の数が少ない研究でもできるかもしれません。
しかし、被験者の少ないデータは、個人差によるバラつきの影響が大きすぎて
信頼に値するデータとは言えません。
信頼に値するデータを得るためには数千人、数万人規模のデータが必要となります。
高血圧や糖尿病のように、一般的な疾患であれば、
大規模なデータを集めることも可能でしょう。
しかし、神経障害性疼痛で、なおかつそれが顔・口・顎 (口腔顔面領域)に起こったものと
限定をすると、そのようなデータを集める事は極めて困難です。
大規模なデータを解析する場合は、メタ分析と言って
複数の研究データを統合して解析をする方法があります。
しかし、メタ分析のためには、複数の研究の診断基準や
データの集計方法などが一致していなければなりません。
口・顔・顎に起こる神経障害性疼痛は世界的な認識が低く、
診断基準が一定でなかったり、治療方針に違いがあったり、
データを統合するためには様々な問題があります。
なので「お口の中に起こる神経障害性疼痛に対する、特定の薬のNNT」
は、あまり良いデータが無いのが現状です。
しかし、神経障害性疼痛は体のどの部位にも起こるので
他の部位に対する効果であれば、NNTが算出されている場合があります。
神経障害性疼痛の一種である、有痛性糖尿病神経障害や、帯状疱疹後神経痛などに
関する NNT であればデータが存在します。
例えば、2009年にCochrane Review に掲載された Moore RA らの報告 (1) によると
プレガバリン 600mg/日 の、帯状疱疹後神経痛に対する NNT は 3.9、
有痛性糖尿病神経障害に対する NNT は 5.0、
中枢性神経障害性疼痛に対する NNT は 5.6、
線維筋痛症に対する NNT は 11 であったとされます。
より新しい、2019年に Cochrane Review から発表された Derry S らの報告 (2) によると
帯状疱疹後神経痛に対するプレガバリン 300mg/日 の NNT は 5.3、
600mg/日 では NNT は 3.9 でした。
有痛性糖尿病神経障害に対するプレガバリン 300mg/日 の NNT は 22、
600mg/日 では NNT は 7.8 でした。
混合または未分類の外傷後神経障害性疼痛に対するプレガバリン 600mg/日 の NNT は 7.2、
600mg/日 では NNT は 3.9 でした。
中枢性神経障害性疼痛に対するプレガバリン 600mg/日 の NNT は 9.8 でした。
口腔顔面領域の神経障害性疼痛も、これらのデータを治療の参考にすることができます。
例えるならば、肩の関節痛に対する消炎鎮痛薬の効果のデータを
膝の関節痛に対する治療の参考にするのと似ていますね。
続きの記事で、プレガバリン以外に、
口腔顔面痛の分野で使用されるお薬の NNT についても
書いていきたいと思います。
原因不明の痛みでお困りの際は、当院までご相談ください。
あんどう歯科口腔外科:www.ando-pain.jp
参考文献
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